
日本語学習者が混乱しやすい「は」と「が」について、「6つ」のポイントをお伝えいたします。
「1」:「は」の文では、伝えたい情報は「は」の後に来る。「が」の文では、伝えたい情報は「が」の前に来る。
・【あの人は社長です。】
→お互い「あの人」を見ている状況で、「あの人」について教える場合です。つまり、「あの人」は既にお互いに分かっている情報で、伝えたいのは「社長だ」という情報です。
・【あの人が社長です。】
→社長がいる場所で、社長がどの人か知らない人に「あの人だよ」と教える場合です。つまり、「社長」は既にわかっている情報、伝えたい情報は「あの人」という情報です。
「2」:現象を言うときは「が」、判断や評価を言うときは「は」を使う。
・【(外を見て)あ、雨が降っている。】
→見たの状態を言う文(現象文)の場合は「が」を使います。
・【社長はよく飲みに行く。(動詞文)】
・【沖縄の海はきれいだ。(形容詞文)】
・【彼は社長だ、(名詞文)】
→見たものを認識して、一般的な性質や属性についての判断を言う場合、「は」を使います。
※形容詞文と名詞文は、主題の性質や属性を言う事が多いので、基本的に「は」を使います※
「3」:従属節・名詞修飾節の中では「が」を使う
・【彼がうちに来たとき(従属節)、私は出かけていた。】
・【私が作った(名詞修飾節)料理はこれです。】
→「~たら、~と、~ので、~なら」のような従属節の中と、名詞修飾節(連体修飾)の中では「は」は使えません。
・【彼は(が◯)うちに来たら、お茶を出してください。】(〜たらを使った文)
・【私は(が◯)行ったことのある国は、日本だけです。】(名詞修飾節の文)
→これは、基本的に文の主題は主節に来るためです。
「4」:対比の「は」
・【ひらがなは書けますが、漢字は書けません。】
→「ひらがな」と「漢字」を対比させて言いたいので「は」を使っています。
・【雨は降っています。】
→「雨は降っているが、雪は降っていない」のように、他のものと対比している意味合いになります。
※雨が降っている→見たままの現象を述べています※
「5」:排他の「が」
・【彼が社長です。】
→格助詞「が」にも主体以外の働きがあります。排他(または総記)と呼ばれ、いくつかの候補の中から「まさにこれ!」と示すような働きです。
そのため排他の意味で「が」を使うと「ほかならぬ~」というようなニュアンスが出ます。
※1番で「彼は社長です。」という例を出しました。ここで「が」を使うと、「ほかの誰でもなく、彼が社長だ」という排他の意味になります。
「6」:対象の「が」
また、格助詞「が」には対象の働きもあります。
「好きです」、「上手です」、「わかります」、「見えます」などは対象を格助詞「が」で表すことが決まっています。
以上が「は」と「が」の違いについての簡単な解説でした。
外国人に「は」と「が」について質問されたら、まずはここで紹介したルールのどれかにあてはまらないか考えてみましょう。
~~~予備知識~~~
●格助詞の「が」
格助詞というのは、名詞と動詞などの述語を結びつける働きがある助詞のことです。
格助詞の「が」は、述語の主体を表します。
文を作るには、必ず「何かをする」主体(人や物)、「ある/いる」主体、「なる」主体が必要なのですが、このような主体は普通「が」で表されます。
「お母さんが 台所で 晩ごはんを 作っている。」
上の例を見てみると、「作っている」という述語に、「お母さん」「台所」「晩ごはん」という名詞が結びついています。
これらの名詞について、動作をする主体や対象、場所などをあらわす働きを持たせるものが格助詞です。
日本語の格助詞には「が」のほかに「を、に、へ、で、と、から、まで、より」があります。
●とりたて助詞の「は」
とりたて助詞というのは、話し手の捉え方を暗示する助詞のことで、古典や学校の国語では「副助詞」や「係助詞」などと呼ばれています。
「は」は何を表すかというと、文の主題を表します。
主題とは「何について述べるのか」、つまり話のテーマで、後ろにはそのテーマについての解説が続きます。
代表的なものに「も、だけ、しか、ばかり、こそ、さえ…」などがあり、「は」もこのとりたて助詞の一つです。
「お母さん(主題)は 台所で 晩ごはんを 作っている」(解説)。